パニック障害とは
パニック障害とは、突然のパニック発作が出現し、そのパニック発作がまた起きるのではないかという不安感と恐怖感が持続し、日常生活に影響を及ぼしている状態のことをいいます。
例えば、電車や人ごみにでると息苦しくなり、めまいがする。あるいは部屋に一人でいるときにも冷や汗をかいて過呼吸になった。このような場合はパニック障害の可能性があります。
パニック発作の症状
①動悸、心拍数の増加
②発汗
③身震い、または震え
④息切れまたは息苦しさ
⑤窒息感
⑥胸の痛み、または胸部の不快感
⑦吐き気、または腹部の不快感
⑧めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ
⑨現実でないような感覚
⑩自分が自分でないような感覚(離人感)
⑪症状をコントロールできないことへの恐怖感
⑫冷感や熱感
この項目のうちすべてが一度に出現するわけではありません。パニック発作の症状は個人によって出現する症状の種類や数が違っています。
予期不安と広場恐怖
パニック発作は、死んでしまうのではないかと思うほど強くて、自分ではコントロールできないと感じます。そのため、予期不安というものが出現するようになります。予期不安とはまた発作が起きたらどうしようかという不安のことで、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになります。とくに、電車や人込み、美容室、映画館、エレベーターの中など閉じられた空間では「逃げられない」と感じて、外出ができなくなってしまうことがあります。こういった空間に対する恐怖心を広場恐怖といいます。
パニック障害の原因
パニック発作が起きる原因ははっきりとは解明されておりません。一説には興奮とリラックスを調節する自律神経機能がうまく作用せずパニック発作に至っているのではないかといわれています。また人間の脳の奥深くに扁桃体と呼ばれる部分があり、その部分の過剰反応によって強い不安が出現すると考えられています。
自律神経や脳が正常に機能するためには神経伝達物質というものが大きく関与しています。セロトニン、ノルアドレナリン、グルタミン酸などの脳内神経伝達物質のバランスが崩れていると脳機能が正常に作動せず、不安、緊張、恐怖の症状が出現すると考えられています。
パニック障害の治療
パニック障害の薬物療法
パニック障害の治療にはSSRIと呼ばれる分類上は抗うつ薬に分類されるお薬によって治療します。SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬と呼ばれるもので、脳内の神経伝達を担っているセロトニンの量を増やす働きがあります。セロトニンの量が増えると、脳内の神経回路の働きがよくなり、不安、緊張、恐怖をコントロールできるように手助けをしてくれるようになります。またセロトニンは気分の落ち込みや睡眠の質の改善などにも関与しているといわれており、このために分類上は抗うつ薬に分類されています。
SSRIは即効性がなく、SSRIの効果がでてくるまでには少なくとも2~3週間程度の期間を必要とするためSSRIの効果が発現してくるまではパニック発作を予防することができません。このため即効性のある抗不安薬を一時的に併用してパニック発作の出現をおさえたり、予期不安、広場恐怖を緩和する場合があります。
パニック障害の心理療法
SSRIの効果が充分に発現されてくる頃になると、いよいよ次のステップに進みます。
今までパニック発作が出現しやすく、近づきたくなかった場所に少しずつ段階を踏んで慣れていくようにします。この「少しずつ」「段階を踏んで」というのが非常に大切です。
例えば骨折をした短距離陸上選手が、骨折が治ったからといっていきなり全速力で100mを走りきる訳にはいきません。おそらく軽いウォーキングから始めるでしょう。それと同じようにパニック障害の予期不安、広場恐怖に対しても徐々に慣らしていき、自信がでてきたら次のステップに進むという具合にしていきます。
医師とよく相談し、段階的に苦手な場面、ストレス場面への暴露をおこなっていきます。このため暴露療法と呼ばれています。
具体的には長距離区間を走る特急電車に乗ることが怖いと感じる場合は、家族や友人と一緒に各駅停車の普通電車からひと駅を目標に乗ります(ストレス暴露)。ひと駅が何度も達成できるようになり、自信がでてくれば普通電車のふた駅連続で乗ることにチャレンジしてみるといった具合です。最終的には家族や友人の付き添いなしで単独乗車できるようになります。距離もすこしずつ、ひと駅、ふた駅と乗車間隔を広げ、自信をつけていくという方法です。
もしも不安が襲ってきたときのために頓服として即効性のある抗不安薬を携帯しておくことも不安解消に役立つでしょう。
日ごろからの心がけ
治療中にパニック発作が起きてしまっても決して悲観することはありません。少し落ち着いてきたときに頓服薬を飲んだり、座って大きく呼吸するように心がけたりとパニック発作に対して冷静に対処することができるようになることが大切です。
パニック発作が出た時はいい練習、トレーニングになると思うようにしましょう。パニック発作はいつ出現するかわからないため、家族や周囲の方の理解やサポートが必要になることがあります。周りの方に発作がどのように出現するのか知っておいてもらうだけでも安心感がもてるようになります。
睡眠不足や疲れ、体調が悪いときはパニック発作が出現しやすいといわれています。またコーヒーや緑茶などに含まれているカフェイン、たばこに含まれているニコチン、お酒に含まれているアルコールなどもパニック発作を誘発しやすいといわれています。
普段からの睡眠習慣や生活習慣の改善をはかっていきましょう。
パニック障害は決して珍しい病気ではありません。一生の間にパニック障害になる人は100人に1~2人といわれます。最近では、もっと多くの人がパニック障害になるという報告もあります。